Artist Talk:彫刻家 小林 一夫

Artist Talk:彫刻家 小林 一夫

本記事は、7月1日に行われたオープニングレセプションより、小林さんのトークを一部抜粋してお届けします。

[作家紹介]
長野県出身。信州大学の教育学部美術科で美術を学び、卒業後は美術の高校教師として 55歳で退職するまで教員と彫刻家を両立しながら制作を続ける。
大理石や砂岩などの石彫をメインに、現在は流木や金属などの素材も積極的に取り入れた彫刻作品を発表。自然から生まれるエネルギーや大地のパワーをイメージした作品は、国内のみならず、上海や北京、台湾、スリランカなどでも展覧会を開催され、多くの方を魅了している。

彫刻家

小林 一夫

「小林一夫彫刻展 木のイノチ 石のアソビ」について

縁あって、こんなに素晴らしい会場で展示できることが本当に喜びでいっぱいです。今までいろんな美術館で展示をやったきましたが、一つのスペースでこれだけの展示をしたのは、これが初めてです。この会場は1回見ただけで、すごく気に入りました。

私の仕事は、会場から発想して作品を創るっていうことを多くやっています。今回は「森のハジマリの祭」「森の子」「岬の先の座標軸」がこの会場を見て作った作品です。

ここ(ART FACTORY城南島)からどんなことを発信できるかということを展覧会の話が決まってからずっと考えていまして、それこそ夢にでも出てくるようなレベルで、本当に苦しんだというか、楽しかったというか、それで実現した展覧会です。

地球ができたのが…あ、話がどんどん大きくなっていきますから、頭の中を自由にして想像してください。作品ってこういう風に見なくちゃいけないっていう決まりはないですから、50人いたら 50通りの見方があっていいと思います。できるだけ頭の中を自由にして、想像力を膨らませてもらうと、非常に楽しいものじゃないかなという気がします。

螺旋と森、そして430光年先の北極星

地球ができたのがだいたい46億年前ですね。そして森ができたのがだいたい3億 8000年前です。岩石だった天体から生命が生まれるわけです。これ自体がものすごいことで、未だにどうして生命が生まれたのかっていう定説はないです。想像すらできない世界ですけど、いずれにしても3億 8000年前に森というものが存在したわけです。それから動物が生まれ、アフリカにホモサピエンスが生まれ、それで現在我々がここにいるわけですけど。

「森のハジマリの祭」は、森の始まりの素晴らしさというか、凄さというか、そういうものを作品にしたいなと思って作った作品です。

立っているのは(「森の子」を囲んでいる3点)、生命の象徴みたいな、植物が持っている螺旋です。根っこがあって、そして上に伸びていくイメージです。

丸太の桜をチェーンソーで 4つに切って、その1本から螺旋を掘り出したんです。くねくねした、私の性格も非常に曲がってるもんでね。こういうのは結構得意なんですよ。直線の方は作れないという性格です(笑)。

螺旋があって、森があって、3つの物体があって、森のお祭りを創っちゃおうという制作意図で創りました。

これ(会場の床に描かれたチョークの線)は円だと思っている人が80%ぐらいだと思いますけど、円じゃなくて向こうの端から視線をずっと追っていくと螺旋になってます。螺旋は自然の一番基本的な構造なんです。30センチの三角形を作って、螺旋を描いていって、アルキメデスの螺線って言うんですけど、そこへ「森の子」という名前をつけた作品を90個並べました。

螺旋で永遠に広がっていくイメージです。三角形も螺旋でどんどん広がっていく。これ(螺旋状に並んだ「森の子」)がどんどん大きくなっていくイメージです。

陶器に見えるけど、実は砂岩というインドの石です。インドの岸壁から切り出した石ですから、中の模様は地層ですね。地層が円形になっている。

白いのは長野県から出た大理石です。これを出しているところはもう閉山しました。磨くと非常に綺麗な模様が出てきて、私はいい石だと思います。ここ(「森の子」)に乗っているのは真鍮です。真鍮をロウ付けで付けてあります。

色々言っていますが、一番は皆さんの想像力で「あ、ちょっと可愛いよ」っていうところから入ってもらえばいいかなと思って。「可愛いのがたくさん集まるとすごいよ」という風になるんじゃないかなと思います。

「岬の先の座標軸」もこの空間のために考えました。メッセージを発信するような作品を創りたいと思って創った作品です。ケヤキの木と、横になっているのは日本海の流木です。流木を拾ってきて、そのままだとあまりにも流木っぽくなり過ぎちゃうんで、キッチンハイターで漂白しました。動物の骨みたいなイメージにしたかったんです。

これ(流木の一片)が北を指してます。(4か所の流木は)東西南北を正確に指してます。北の方向を、延長すると浅草橋、次は上野、日本海を抜けて、稚内の左側をかすめて、オホーツク海を越えて、ロシアのオホーツクという町の上空を通って、北極点に着きます。北極点の先には430光年の北極星があります。そこまで考えると、頭の中のスケールがだんだん大きくなってきたんじゃないかなというような気がするんですけど、どうですかね。それをこの作品から発信しているというイメージです。

座標軸(作品)の原点にある自然石は、表面だけ綺麗に磨いてあります。私は長野県の小諸市に住んでいて、浅間山っていう山が北側にあるんですけど、1万5000年前に大噴火をしたことがありました。(山の)上の部分が全部吹っ飛んで、軽石流と溶岩流が流れて大地ができて、その上に現在の小諸市があります。だから地中を掘ると、溶岩の石と軽石しか出てこないんですよ。ところが私のアトリエの近くを少し掘ったらこういう(座標軸の石)細長くて、すべすベした石が出てきたんですね。この石は絶対そこに(自然に)あることはありえないんです。浅間山の噴火で出てきた石じゃないんです。下流にある千曲川から誰かが何かの目的のために持ってきて置いたものだと思うんです。それは私のおじいさんかもしれないし、その先代かもしれないし、もっと言えば縄文人が持ってきたものかもしれないし、それは全然わかんないです。でも、それだけでこの一つの石に対して、ロマンが生まれます。

岬に、もしこれ(「岬の先の座標軸」の作品)があったとしたら…ということをイメージしてもらいたいんです。(いずれ)木は全部朽ちていっちゃうけど、石は多分そのまま存在します。そうするとなんかそれだけですごく意味があることにように思います。

2003年にイギリスの潜水艦の艦長が「1421」という本を出したんです。中国が一番栄えた明の時代に、鄭 和(てい わ)っていう人間が船団を組んで世界中を大航海したんです。その時にアメリカ大陸を1421年に発見したという仮設の本です。1421年に明がアメリカ大陸を発見したということが、もしそれが世界の説になったら、コロンブスが 1491年に発見したことが間違いだったっていうことになりますよね。だから世界中の学者が反対したんです。私は(仮説に対しては)どうでもいいんですけどね。真実は誰もわからないから。ただものすごく大きなロマンを感じて、そのアメリカ大陸が発見された時はこんなもの(「岬の先の座標軸」)があったんじゃないかなというような想像をしています。非常に勝手な妄想なんですけど。そういう妄想をしながら創る楽しさを皆さんに自由に感じてもらえたらいいと思います。

縄文的なエネルギーと天地に向かうエネルギー

2つの作品は、楠の木を使ってあります。縄文のような、エネルギーを表現したもので、中は空洞です。楠の木の皮の部分や中身を全部板状にして、張り合わせていったものです。それを麻縄で締めてある。麻縄って日本古来から神社仏閣に使われてたもので、神が宿るっていうような意味があるみたいです。

「大地の鼓動が聞こえる」は去年作った作品、「森の奥にオイデオイデ」は今年新しく作った作品です。

(「森の奥にオイデオイデ」は)女性的な柔らかい線を作り、中を覗きたくなります。縄文時代にあったような男性のシンボル的なイメージもあったりします。

今回のフライヤーの表紙にした作品「月の光を待つ」は、去年一陽会の野外で展示した作品です。中に大理石の「森の子」が3つ入っています。月の光が出てくるとどんどん成長していく。地に向かうエネルギーと、天に向かうエネルギーを、自然の植物の持ってるエネルギーを表現した作品です。

小林さん、ありがとうございました。

自由に見て感じて、想像力を膨らませて...。
ぜひ会場に足を運んで、作家の思いと自然のエネルギーを受け取ってください。

展覧会情報

小林一夫彫刻展 木のイノチ 石のアソビ

[会 期]2026年7月1日(水)~9月5日(土) ※会期中無休   
[時 間]11:00~17:00(最終入場16:30)   
[入場料]無料   
[会 場]ART FACTORY 城南島 1F
https://store.gallery1045.com/blogs/blog/260612

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